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瑞相寺の使命

 

錦帯橋の桜も開花が近づいてきて、春の訪れを感じる今日この頃です。年度末で、皆さまご多用の事と存じます。今年度は、住職も1年間未来の住職塾に通って、瑞相寺の使命について考えてきました。「お寺の未来フォーラム」で瑞相寺の寺業計画書を発表し、瑞相寺の使命に、多くの方が共感してくださいました。先日は匿名のおはがきをいただきました。瑞相寺の使命について述べたいと思います。

 

 

 

匿名のはがき

 

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先日、東京在住の方から、瑞相寺三谷彰寛宛に、次のような匿名のおはがきが届きました。

 
東京在住、浄土宗の檀信徒です。調べものをしていましたら、偶然に貴サイトへたどりつきました。「護持会費等ございません」となっていましたが、驚きと同時に、貴寺の檀信徒がうらやましく思いました。私の菩提寺は一般的なので、全て有ります。先日は本堂改修寄付として、高額請求がありました。
「お坊さん便」のコメントがありましたが、デリケートな問題なので、一般的に地域のお坊さんはコメントをしない中、された事について敬意を表します。これからの発信も期待しています。
 
応援のおはがき、誠にありがたい限りです。旧来の「檀家制度」の枠組みではとらえきれない時代に突入し、日本仏教会は今大きな転換的を迎えております。
 
瑞相寺では伝統的に、 護寺会費、年会費、維持費、管理費、強制寄付、行事や法要への強制参加、入檀料、離檀料、境内墓地の納骨料、その他諸々お寺から一方的にお願いする費用はございません。もちろんお寺によって考え方はまるっきり違います。それらの費用が全て不要なものというわけではございません。大切なのは、お寺側とお檀家さま側との気持ちのバランスだと思います。
 
また、瑞相寺では、お布施の金額を指定することも、金額の多寡に関して申し上げることも一切ございません。なぜなら、お檀家さまお一人お一人の経済状況や、信仰の度合いは全く異なるからです。経済的に困難な方の中で、故人に信仰がある、遺族に大切な方をちゃんと供養したい気持ちがある方には、葬儀式や納骨のお布施を無償で行うことも今まで何度もありました。ただし、その気持ちがなく、「ただの世間体」「安く済ませたい」という方はお断りをしてきました。
 
「お布施はお気持ちで」という言葉は、不明瞭で不信感を抱かれる方もいらっしゃるとは存じますが、本当に大切なのはお布施の金額よりも、やっぱり「お気持ち」だと思います。
 
 
 
 

お布施とは

 
20170328三輪清浄のコピー
 
「布施」「三輪清浄」「喜捨」「檀家」の4つのワードに関して『浄土宗大辞典』を引いてみました。
 
・ふせ【布施】
出家修行者、仏教教団、貧窮者などに衣食その他を施し与えること。仏道修行において勧められる無貪無欲の実践。サンスクリット語・パーリ語danaの訳。檀那、柁那などと音写される。衣食などの物資を施す財施、教えを説き与える法施、他人から怖れを取り除いてやる無畏施を三施という。
大乗仏教では菩薩の行うべき修行(六波羅蜜)の最初に置かれ最重要視される。実践に当たっては、施す者も施される者も、施物も貪りの心を離れた清浄なものでなければならないとされる。
法要等の後、貧窮者への衣食などの布施が為されたが、現代では僧侶に対して施されることをいう。それが財施であり、これに対して僧侶が経を読み説法するのを法施という。
 
さんりんしょうじょう【三輪清浄】
布施行を実践するときの理想的なあり方。①施者(布施する者、能施)、②受者(布施を受ける者、所施)、③施物(布施されるもの)の三者に固執観念のないこと。
 
きしゃ【喜捨】
報償を求めず喜んで財物を寺院や僧尼等に施すこと。
 
だんか【檀家】
寺や僧を供養する施主の家。檀徒、檀越、檀那などともいう。
 
 
浄土宗『新纂浄土宗大辞典』平成28年3月14日初版発行より
 
本来お布施の在り方として、僧侶(寺院)・檀家・施物(お金など)、全てが清らかでなくてはいけません。三者が清らかな状態で、僧侶は法を説き、檀家は寺を支えます。先々代である祖父、先代である父は「くれぐれもお檀家さんに負担をかけないように」と常々申しておりました。現住職である私も、その伝統を引き継いで参ります。日ごろお檀家さまとお話をしていると、先々代、先代と、本当に尊敬してくださっていたことがよくわかります。先々代、先代、現住職も、瑞相寺を支えてくださるお檀家様方に本当に感謝しております。
 
先日、経済的に余裕がなく、身寄りのないおばあさまが「私が死んで和尚さんにお葬式をあげてもらうために、毎月3000円ずつ貯めています。目標の金額になったら和尚さんにお預けします。」とご相談に来られました。その方に「お葬式のお布施はいただかなくとも、しっかりお葬式はお勤めさせていただくので、今の暮らしを良くするために使ってください。」と申しましたが、おばあさまは「いつもお世話になってて、お寺にお預けすると私の気持ちが安心するんです。」とおっしゃいました。このおばあさまのお布施こそ、本来のお布施ではないでしょうか。
 
僧侶派遣業者に関しては昔からあったようですが、Amazon「お坊さん便」や僧侶派遣サイトが脚光を浴びるようになり、世間は旧来のお布施の在り方について、厳しい目を向けられるようになりました。「坊主丸儲け」という言葉もございますが、そんなのごくごく一部の不誠実なお寺のみです。
 
私自身はAmazan「お坊さん便」に登録していただくつもりは一切ございませんが、お布施の在り方、僧侶の現状、日本仏教の問題点などについて、世間に信を問う意味ではこういったサービスは必要だと思います。僧侶派遣業者に関しては昔からあるようですが、Amazonというインパクトをきっかけに、諸問題が表面化してきました。既存の檀家制度に長らくあぐらをかいてきたお寺側の責任は、山ほどあります。
 
「お寺との付き合いにはお金がかかる」「どうやってお寺とご縁を結べば良いかわからない」など、現に多くの方が困ってらっしゃいます。僧侶派遣にまつわる話は、具体的な情報も含め様々な事を各方面からお聞きしますが、寺、施主、業者の三者のどれもが搾取構造にあってはならないと思います。三者が、WIN-WIN-WINになるのが理想的な在り方だと思います。
 
 
 

瑞相寺の使命

 
 
瑞相寺の5つの使命
 一、お念仏のみ教えを通じて、自他の命を見つめ、前向きな人生を歩んでもらう
 一、信仰や志でつながる、自由で誠実な付き合いをする
 一、お布施の金額は一切問わず、現代の事情に合った真心のこもった供養をする
 一、伝統と革新の融合で、お寺の持つ可能性を追求し、地域や社会の問題に取り組む
 一、瑞相寺が永代に渡って存続できるよう、常に進化し続ける

 

現在様々な問題が山積

 

私自身、先代住職である父の死で絶望の淵に立たされた時、浄土宗のお念仏のみ教えで救われ、本当に多くの方々に助けていただいてきました。瑞相寺の第三十五代目住職を拝命して現在三年目ですが、おかげさまで毎日前を向いて歩んでおります。 また、この間に様々な経験をしてきました。

ある年のお盆前のことです。葬儀社で法要をして帰ろうとしていると、全く別の三人の方が私に泣きながら相談をされました。ご事情をお聞きすると、四十代の息子さんが自死で亡くなり、誰にも伝えることができなかったので、僧侶を介さずにこれから火葬場に向かう直前だったそうです。いわゆる直葬です。

私の読経を聞き、「三分でも、一分でもいいからどうかお経を上げてください」と頼まれました。三人は、亡くなった方のご両親と弟さんでした。急遽斎場の時間を少し遅らせてもらい、枕経、斎場でお勤めをし、短い時間の中お念仏のみ教えをお伝えいたしました。斎場でのお勤めが終わり帰る所、涙ながらに深々と頭を下げられ、「ありがとうございます…ありがとうございます…」とお父さまがおっしゃいました。

亡くなった方のお名前以外は聞く事ができなかったため、あれからどうお過ごしかは存じません。私一人で初盆をお寺で勤め、亡くなった方の菩提を念じ、ご家族の皆さまをお護りいただくよう、ただひたすら阿弥陀さまにおすがりするばかりでした。

その他にも、大切な方への気持ちはあるが、諸事情で供養できない人、どうしていいかわからない人が、いかに多く存在することかを見てきました。

 

これからのお寺

 

その一方で、お念仏のみ教えを通じて、前向きな人生を歩んでいかれる方もたくさん見てきました。「阿弥陀さまを信じて南無阿弥陀仏とおとなえすれば、必ず極楽浄土に往生することができる」「亡き方は常に私たちを見守ってくださっている」「極楽浄土でいずれ再会できる」お念仏のみ教えは本当に前向きな教えです。様々な関わりの中で、より多くの方に浄土宗のお念仏のみ教えと出会っていただき、前向きな人生を歩んでいただきたく存じます。

近年は時代の変化に伴ってか、「瑞相寺の檀家になりたい」と新たなご縁を結んでいただく機会が増えて参りました。また、ありがたいことに、「瑞相寺の檀家であることを誇りに思う」とのお言葉を頂戴することも増えて参りました。日々感謝いたしております。お檀家さまおひとりおひとりとのご縁が、瑞相寺にとってのかけがえのない宝物です。

これからはお寺とお檀家さまがが、既存の「檀家制度」という概念を超えた、信仰や志でつながる、より密接な関係性を築けるよう全力で精進いたします。お寺との付き合いが心の支えになっても、心の負担になっては意味がありません。経済的・精神的・物理的障壁を、できる限り取り払って参ります。タブー無しで何でもご相談ください。 また、先の使命を達成するためには、私たちの協力が不可欠です。人々のため、地域や社会のため、そして自分自身が前向きな人生を歩むため、共に進んで参りましょう。

合掌

住職 三谷 彰寛